京都市の空き家は105,300戸。うち傷んだ一戸建てが約1万戸あります。解体の届出は月222件、その99%が民間。決める順番と、見積で聞くべき3つを公開データから整理しました。
親が住まなくなった家が、そのままになっている—— 京都でいちばん多い相談は、たぶんこれです。
壊すのか、直すのか、貸すのか。決めないといけないのは分かっている。 でもいくらかかるのか見当がつかないし、業者に知り合いもいない。 兄弟に切り出すのも気が重い。そうして何年も経ってしまう。
このページでは、京都市が公開しているデータをもとに 「実際にみんなどうしているのか」「決める順番はどうすればいいのか」を整理しました。 相続の手続きや税金の話は専門の方の領域なので扱いません。建物の話だけです。
総務省の調査では、京都市の空き家は105,300戸・空き家率12.5%です。 だいたい8軒に1軒が空いている計算になります。
ただ、この中には賃貸の募集中や売り出し中の物件も入っています。 そういうものを除いた「賃貸でも売り物でも別荘でもない=ただ放置されている家」が44,300戸。 さらにそのうち一戸建てで傷みが出ているものが、約1万戸あります。
出典:総務省 住宅・土地統計調査(令和5年)
1万戸です。ご実家がその1つでも、まったく珍しいことではありません。
建物を80㎡以上壊すときは、着工前に役所へ届け出る義務があります(建設リサイクル法)。 京都市はその届出の中身を、毎月オープンデータとして公開しています。
数えてみると——
| 項目 | 件数 |
|---|---|
| 解体の届出 | 月222件(年2,280件) |
| うち木造住宅 | 月138件 |
| 木造住宅の床面積(まん中) | 130㎡=40坪弱 |
| 公共の工事 | 222件のうち1件だけ |
つまり解体の99%は民間の工事です。役所がやっているのではなく、 あなたと同じ、個人や会社が判断して壊しています。
京都市だけで毎月138軒の木造住宅が姿を消しています。 決めていないのは、あなただけではありません。
出典:京都市オープンデータポータル 「建設リサイクル法に基づく届出情報」(CC-BY 4.0)/令和8年の1か月分を集計
木造住宅の解体を区ごとに数えると(5か月分)、いちばん多いのは伏見区でした。
| 区 | 件数(5か月) |
|---|---|
| 伏見区 | 118件 |
| 左京区 | 91件 |
| 西京区 | 76件 |
| 北区 | 69件 |
| 右京区 | 69件 |
※80㎡未満の建物は届出の対象外なので、 実際にはこれより多く壊されています。京町家は7割超が30坪以下なので、 この数字には出てこないものがかなりあります。
「急がなくてもいい」と思われるかもしれませんが、 置いておくこと自体にコストがかかります。
① 建物は思ったより早く弱ります。 人が出入りしないと風が通らず、湿気がこもります。 京都の町家は8年で5,566軒が姿を消しました(残り34,580軒)。 年に約700軒のペースです。直せば使えたはずのものも、この中に含まれています。
② 役所から指導が来ることがあります。 危険な状態になった空き家は「特定空家」に指定されることがあり、 京都市ではこれまでに命令が33件、行政代執行が1件出ています。 指定されると土地の固定資産税が最大6倍になります (住宅が建っている土地の税の軽減が外れるため)。
③ 京都市には「空き家税」ができます。 非居住住宅利活用促進税といって、令和12年度から課税開始の予定です。 決めるための期限が、制度としてもう置かれている状態です。
出典:京都市 令和6年度京町家まちづくり調査/ 国土交通省 空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況/京都市 非居住住宅利活用促進税
いちばん多い失敗は、先に業者を呼んでしまうことです。
解体屋さんに聞けば「壊す」話になりますし、工務店に聞けば「直す」話になります。 どちらも悪気があるわけではなく、自分の得意なことを提案するのが当たり前だからです。 でも呼んだ順番で結論が変わってしまうのは、もったいない。
順番は、こうしてください。
傷み方によって、選べる道が変わります。 屋根と基礎がしっかりしていれば直す選択肢が残りますし、 そうでなければ壊すほうが安くつくこともあります。 ここが分からないうちは、壊すか直すかは決められません。
金額が分かると、話が一気に具体的になります。 「どうしよう」ではなく「この金額なら、こうする」と考えられるようになります。
ご兄弟がいる場合、①②を揃えてから話してください。 「実家どうする?」だけで切り出すと、気持ちの話になって止まります。 いくらかかるかが分かっていると、話は前に進みます。
ここまで決まっていれば、業者に何を頼めばいいかが自分で分かっています。 言われるままにならずに済みます。
役所の入札結果には、落札した会社だけでなく参加した全社の金額が公表されています。 つまり同じ工事に対する相見積を、そのまま観察できます。
京都府内の解体工事45件を調べたところ——
| 開き | 件数 |
|---|---|
| 1割以上の差があった | 18件(38%) |
| 2倍以上の差があった | 3件 |
解体は、調べた工事の中でいちばん会社ごとの差が大きい工事でした。 道路工事や一般的な内装改修は、ほとんど差が出ません。
1社だけで決めると、その金額が高いのか安いのか、比べようがありません。
出典:京都府の入札結果2,652件のうち、 3社以上が参加した解体工事45件を集計。 ※公共工事には「これより安いと失格」という下限がありますが、 個人の工事にはその線がありません。民間ではもっと開くと考えたほうが安全です。
解体の見積は「解体工事 一式」と1行で書かれていることがあります。 中身が分からないと、後から費用が乗ります。聞くのはこの3つで足ります。
壊したあとの木材・瓦・コンクリートを運んで捨てる費用です。 金額のかなりの部分がここで、「別途」になっていることがあります。
2006年より前に建てられた建物には、使われている可能性があります。 2022年から解体前の事前調査が法律で義務になりました。 調査費・除去費・処分費が別扱いになっていないか確認してください。
壊したあとの土地をどこまで平らにするか、ブロック塀や樹木・門扉まで含むかで金額が変わります。 「更地にする」の範囲を、紙で確認してください。
多くの市町村に、空き家の解体や耐震の改修に対する補助制度があります。 京都市の場合、個別指定を受けた京町家なら改修に上限500万円の補助が使えます。
ただし、ほとんどの制度に共通する条件があります。
申請は「着工前」です。契約して、工事が始まってから知っても、もう戻れません。
制度の中身は市町村ごとに違い、年度で変わり、予算がなくなると途中で終わります。 なので金額や条件をここに書くことはしません。 やることは1つだけです——見積を取る前に、市役所へ電話する。 「空き家の解体で使える制度はありますか」と聞けば足ります。
※京町家の指定を受けている家には、 解体するのに1年前の届出義務があります(違反すると過料)。 逆に言えば、1年かけて考えられるということでもあります。
相続の登記は司法書士さん、税金は税理士さん、売買は不動産屋さんです。 私たちには分かりませんし、法律上お答えできない部分もあります。
分かるのは建物のことです。京都の公共工事の入札結果を毎日集めていて、 誰がいくらでどんな工事を受けたかのデータを持っています。 このサイトに654社の実績を載せているのも、そのデータからです。
できるのは、この3つです。
・その見積、見ます。公開データと照らして、金額の目安と、 何が入っていないかをお伝えします。
・その会社、調べます。建設業の許可があるか、公共工事の受注実績があるかを、 公的なデータで確認します。
・声かけを代わりにします。知っている会社にこちらから声をかけます。 数は多くありません。実際に会って、任せられると思った会社だけです。 足りない分は、探し方と声のかけ方をお伝えします。
すべて無料です。個人の方に売る商品がないからです (本業は建設会社向けの入札データの仕事で、お金はそちらでいただいています)。